India Note|インドの現代を知るウェブメディア

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インドでのビジネスはなぜ難しい??日系企業のインド進出を阻む5つの壁

現在インドには日系企業が大小合わせて約1000社ほど進出していると言われています。
しかし、インドでビジネスとして成功を収めている企業はごく少数です。

どの企業もインド進出の高い壁にことごとく阻まれ、1年〜2年で撤退を決める企業も少なくありません。
今後中国を越えて世界一の市場となると言われているインド。
今回はインドに進出をしようと考えている日本人ビジネスパーソンに向けて、なぜその一大市場に日系企業が進出できないのかを以下の5つの点から紹介します。

1. 消費者の壁
2. 雇用の壁
3. 情報の壁
4. 生活の壁
5. 能力・技術の壁

1. インド人はお金を使わない??

インド人の消費者は非常に倹約家です。
引越しをする際には必ず家具ごと移動をしますし、食事も出来る限り安く済ませる傾向があります。
インド人の平均年齢は25歳なのですが、人口の大半を占める若い世代はお金をほとんど持っていません。
日本のようにアルバイトをしてお金を稼ぐ環境も無ければ、初任給も日本の5分の1〜10分の1となっています。

このようにインドでは消費者からお金を取ることが非常に厳しい環境にあるため、BtoCのビジネスがまるで成立しないのです。
これは日系企業に限らず、他国の外資企業やインド企業自体も苦しんでいる問題です。

実際インドでGDPの8%を占めるIT産業は、アメリカ・イギリスを始めとする欧米地域へのオフショア輸出産業によって成り立っています。
そのような状況を理解せず、日本で流行っているBtoCのモデルをインドに持ち込むと、ほぼ確実にマネタイズに失敗して撤退に追い込まれてしまうのです。

最近インドではIT分野でオンラインショッピングの分野が大きく伸びてきていますが、その実情はとても虚しいものです。
業界の一番手、二番手ですら赤字の状態で資金調達を繰り返し、広告に投資してユーザーを獲得、伸びたユーザーを理由にさらに資金調達と、赤字経営を延々と繰り返しています。

もし本気でインド進出を狙っているのであれば、事前のマーケティングリサーチを入念に行い、どの分野であればインド国内でのマネタイズができるのかを検討した上で、進出を決めることをおすすめします。

2. 長期雇用できないインド人

次に日系企業進出の大きな課題となるのが、採用とマネジメントの問題です。
これはインド人に限ったことではありませんが、インド人は基本的に長期雇用という考え方を持っていません。

常にどのように自分自身をキャリアアップさせるのかを前提に考えているので、日本企業のような年功序列の考え方を当てはめていると、雇用したインド人にやっと仕事が慣れてきた頃に転職されるというケースが少なくないのです。
このようにインド人のキャリアに対する考え方は日本と大きく異なります。

転職は当たり前の選択肢であり、優秀なインド人はブランド力があり、給与の高い企業にガンガン転職を繰り返します。
企業もそれをわかっているので、若いインド人であっても優秀だと判断した場合、相当額の給与を払うケースが多くなっています。
加えてインド人はスペシャリストな気質が強く、日本人のように他部門の考え方を配慮して仕事をすることがありません。

企画は企画、セールスはセールスといったように、インド人は自分の与えられた枠組みの中で最適化を図ろうとします。
このような仕事に対する価値観のズレを理解しつつインド人と仕事をしなければ、インド人を採用することはできませんし、それができなければインドのマーケットに深く精通することもできないのです。

3. 日本人が知らないインドの最新情報

日本で現在出回っているインドの情報は相当古くなっています。
それらは日本人がインドに対して持っているイメージそのままのものであり、インドが今後10年で世界一の大国になるということにすら気づけていない方は決して少なくないはずです。

言語の問題、文化の問題、インドにいる日本人たちの問題と、情報が更新されない理由は様々にあると思いますが、一番は現場で得られる情報を重視できていない点にあると感じています。
日系企業は概して現地への人の派遣を嫌がる傾向があります。

・インド人消費者の傾向
・若いインド人世代の生活
・インド人が日本に対して持つ価値観
・インドビジネスのトレンド

このような情報を日系企業は一切知らないまま、とりあえず「インドは人件費が安そうだから」、「インドは人が多いから」、「インドはITに強いから」など曖昧な情報を鵜呑みにしてビジネスを進めようとしている感が正直否めません。

しかし実際のインドの現場はそんなに甘くありません。
インド人は外国からお金を稼ごうと常に目を光らせていますし、公用語でもある英語の最新情報には相当敏感になっています。
さらにインド人はアメリカにも多数進出していることから、インドにいるインド人と、アメリカにいるインド人の繋がりも非常に強固なものとなっており、日本よりも世界最新のビジネス情報には近い位置にいると思われます。

現地に人も送らない、情報もネットで集めるものしか見ない、マーケティングは他社に依頼する、そんなスタンスでは絶対にインドでビジネスを成功させることはできないと断言できます。
実際今インドで少なからず結果を出している企業というのは、インドに腰を据えたスタッフを派遣して、インド国内にも分厚いネットワークを築いている、泥臭くも、とても力強い企業です。

4. 不慣れなインドでの生活

そうはいってもインドに日本人を派遣することは簡単ではありません。
インドと日本は文化が大きく異なりますが、中でも食生活の違いは大きな障壁になってます。

自分の周囲は20代で、比較的若い世代ばかりなので、少し食生活が偏ったとしても体力的な支障はありませんが、それが30歳を越えて、家族持ちともなると非常に大きな問題となります。
インドでは牛肉、豚肉はほとんど出回っていないほか、食事の味付けや、使う調味料も日本と全く違います。

そのためインドに住む日本人は高級ショッピングモールなどでのみ買い物をして、休日もほとんど外を出歩くことなく、インド料理の名前すら知らないと言う方も少なくありません。
情報が少ない土地である以上、ある程度は仕方がないとも言えるのかもしれませんが、これではインド人の生活を知ることもできなければ、彼らとのコミュニケーションにも齟齬をきたしてしまいます。

インドでのビジネスを成功させる上でまず数年、現地に日本人を派遣することは必須になります。
そこで派遣された社員がストレスを抱えたまま仕事で何も結果を出せないということがないように、派遣するメンバーは出来る限り若くてタフな社員を選ぶことをおすすめします。

5. インドに合わない日本のビジネスモデル

最近東南アジアに進出する日系企業の間ではタイムマシン経営と呼ばれる、日本で過去に流行ったビジネスモデルと途上国に持ち込むケースが増えてきています。
しかしインドに限って言うと、そのモデルは全くと言っていいほど通用しません。
まずインド人はすでにアメリカからのタイムマシン経営で、多くの中小ベンチャー企業が立ち上がっており、日本で今流行っているモデルの大半がインドでやり尽くされているというケースが少なくありません。

そして最も大きな問題は日本のビジネスが、日本人相手でしか通用しないという点です。
日本のビジネスはフィーチャーフォンビジネスに代表されるように、世界から見ると異常なほどガラパゴス化が進んでいます。
それは外資系企業が日本に進出する際の障壁になっているのですが、一方で日系企業が海外に展開する際には大きな課題として日系企業を苦しめることになるのです。

一言で言えば「ローカライズ」の問題なのですが、インドの日系企業でこの状態にたどり着けているケースは全くと言っていいほど見たことがありません。
結局これは日本人がインドという市場に対して「ローカライズ」する術を持っていない、つまり日本人の能力・技術が足りていないのです。

インドは英語圏である一方で、人口の約6割はそれぞれ現地語を話し、第一言語とされているヒンドゥー語ですら、その利用率は5割に満たないと言います。
各州が力を持ち、州毎に異なる法律もありますし、北インドと南インドでは文化すらも違います。
そんなインドを多くの日本人は一言で語り、無理やり自分たちのビジネスモデルを当てはめようとします。

「郷に入れば郷に従え」という諺があるように、インドにはインドにあったビジネス進出の仕方があります。
インド企業は決してインドだけでビジネスを完結しようとはしていません。
どの企業も必ず世界進出を前提にビジネスを立ち上げ、それをものすごい勢いで拡大させていきます。

もし本気でインド進出を考えているのであれば、インドにいる少数の日本人から得られる情報だけを頼るのではなく、自分自身インドに足を運び、その土地の様子、雰囲気、匂いを自分の肌で感じるようにしてください。
面倒に感じるかもしれませんが、それが何よりもインドでビジネスを成功させる一番の力にもなりますし、それがこれら5つの壁を越える上での前提条件にもなるのではないかと思います。

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