India Note|インドの現代を知るウェブメディア

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南インドから全国に広がった”Kiss of Love”運動って何??ーインドで生まれる自由化の波。

インド中を巻き込む”Kiss of Love”の流れ

前回、インド社会が変貌を遂げつつある、という記事を書きました。
今、ここインドでそれを象徴するような出来事が起こっています。
それが、”Kiss of Love”運動です。

”Kiss of Love”運動とは、僕が住んでいるベンガルールより更に南にある、ケララ州に端を発するモーラル・ポリシング(非インド的行為を取り締まろうとする自警運動)に対する非暴力的な抗議運動のことです。
そのきっかけになったのは、2004年10月に放送されたニュース番組でした。
その番組は、あるコーヒーショップで若い恋人たちがおしゃべりを楽しむだけでなく、ハグやキスをしているのが当たり前になっている現状を「いかがわしく、反道徳的行為」として取り上げたのです。

これがそのときの動画です。
ケララ州の現地語であるマラヤラムで話しているので内容は分かりませんが、音楽と映像からそれが批判されていることは明白でしょう。
確かに、インドでこのような光景を見る事は滅多にありません。

このニュース映像に対してひどい嫌悪感を示したのが、ヒンドゥー教右派政党のBJPの青年部であるBJYMでした。
彼らはそのカフェの場所を特定し、堕落した若者の姿はヒンドゥー教の伝統に反しているとして集団で襲撃を行ったのです。
幸運にも被害者はいませんでしたが、その様子がニュースで報道され、インド社会に更に大きな波紋を投げかけました。

彼らのこの行為がきっかけとなり、それまで公共の場での恋愛行為をよく思っていなかった一般市民たち、特に若者が過敏に反応し、公園などでデートをしているカップルたちを攻撃し始めました。
実はこれまでにもモーラル・ポリシングを称してカップルなどが警察に逮捕されることがあったのですが、今回の襲撃がニュースで取り上げられたことからモーラル・ポリシングに火が付き、大々的に行われるようになったのです。

これに対して、ケララ州出身の映画監督であるラウルさんがFacebookを通して、モーラル・ポリシングに対する抗議運動である”Kiss of Love”運動を始めました。
ラウルさんは、「キスやハグの何が問題行為なのか?それは愛情表現であり、皆で堂々とキスやハグをしよう」と呼びかけたのです。
このFacebookページは137784いいね!が集まる大反響で、ケララ州コーチンで抗議集会を計画したところ多くの賛同者が集まりました。
“Kiss of Love” FBページ

kiss of love 3

こうして集会の予定日には若者を中心に多くの参加者が集い、デモ更新を始めました。
しかし、そこには集会に反対するヒンドゥー右派グループも集まり、両者が激突することとなり、警察によって主催者など50人ほどが検挙される騒ぎとなりました。

この騒ぎはケララ州だけに収まることはありませんでした。
この一連の争いはニュースとして放送され、インド全域に知れ渡りました。
これに反応したインドの名門大学の学生たちが有志を募り、”Kiss of Love”運動を行ったのです。
高度な教育を受けている彼らの中には欧米に留学する学生や海外で就職する学生も多いですし、インターネットで海外の価値観に触れる機会も以前に比べて格段に増えている。
そのような社会事情も彼らの考え方に影響し、このような結果につながったのでしょう。

kiss of love

kiss of love2

この”Kiss of Love”運動は留まることを知りません。
今日もTimes of Indiaなどを読んでいると今日はどこどこで集会があったとか、デモ行進があったとかという記事を目にします。
また、その記事には必ずと言っていいほどその運動が警察によって抑えられたとか、右派の人々との争いになってしまったということが書いてあります。

若者の中に広がりつつある欧米的な価値観を象徴する自由的な”Kiss of Love”運動と、古くからのインド的な価値観を象徴するモーラル・ポリシング。
これら最近のインド社会に台頭する2つの異なる潮流が、最大の民主主義国として世界中の注目集めるインドにおいて、大きな議論を巻き起こしているのです。

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