India Note|インドの現代を知るウェブメディア

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イノベーションは国境を超える!インドのリバース・イノベーション事例

リバース・イノベーションって?

リバース

従来のグローバルビジネスの世界では、イノベーションは先進国を中心にして生まれ、それが新興国に持ち込まれるという流れをとっていました。
最新の研究施設が集まっていたり、資金を豊富に抱える欧米の先進国で「技術革新=イノベーション」が生まれることは当然に思えますし、イノベーションを生み出したグローバル企業たちは新たな市場を狙ってそれを新興国に流していく。
ところが、多くのグローバル企業はそのイノベーションの輸出の失敗を経験することとなりました。
なぜなら、先進国の顧客向けに作られた製品を新興国でそのまま受け入れられることはありえないからです。
新興国と先進国で社会インフラに大きな差がありますし、所得の水準や人口構成も全く違います。だとすると、先進国でニーズがあるものが新興国では全く必要のないものとなってしまうことは充分に起こりうると考えられます。

その失敗から学んだグローバル企業たちは新しいイノベーションを生み出す手を選びました。それが、「そもそもの製品開発を新興国で行い、最初から現地のニーズに合致した製品を提供し、後から先進国に適用していくという手法=リバース・イノベーション」です。
現在では医療機器のGE(ジェネラル・エレクトロニクス)やP&Gはこの手法を取り入れ、コストパフォーマンスの高いイノベーションを新興国で起こし、それを全世界に広げていくことに力を入れています。
特にここインドは平均所得増加や急激な人口増加によるマーケットボリュームの拡大、高度な教育水準がもたらす人材の豊富さなどの高要因によってリバース・イノベーションを生み出すのに最適な国として注目を浴びています。
今回はインド発、リバース・イノベーションの事例をご紹介します。

インド発!リバース・イノベーション事例

①タタ・モーターズによるタタ・ナノの発明
タタ・ナノはインドの大手自動車メーカータタ・モーターズが開発し、2008年1月に発表、同年からインド国内で市販を開始した小型乗用車です。
もともとはインド最大のコーポレート企業であるタタの自動車会社タタ・モーターズがインドでの自動車普及を目指し、10万ルピー(発表当時のレートで約28万円)という驚異的な低価格での販売された乗用車でしたが、エンジン仕様の向上などのモデルチェンジを経て、価格を抑えたままアメリカやヨーロッパでも発売されています。

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②GEによる携帯型心電計の発明
GEはリバース・イノベーションを象徴とする医療機器の開発をここインドで行いました。それが携帯型心電計(ECG)です。このECGはGEインドがGEで開発された技術をもとにインドの農村地帯などインド市場での使用を明確な形で意識し、開発設計、生産され、インド市場で販売されました。その過程の中で、それまでになかったほどの小型・軽量化、低価格化がなされ、、今では、このようなインド発のECGが世界各地で販売されるなどのグローバルな展開になっています。
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③ネスレによる低価格かつ低脂肪な乾麺「マギー」
ネスレが約30年前にインドで発売した「マギー」はインドの乾麺市場(インドでは焼きそばのような麺に香辛料を混ぜて炒める麺が人気なんです!)で今も4分の3のシェアを占めており、マーケットリーダーとしての地位を確立してます。マギーはもともとインドの農村(冷蔵庫などはなく、食材の保存が難しかった)のために低価格で低脂肪な保存食として開発されました。低価格でローファットな食材としてインド中で人気を博したマギーはオーストラリアやニュージーランドなどを中心に全世界に広がっています。

マギー

④コカコーラによる「eKOCool」の普及
コカコーラは電気の供給量が少ないインドの農村でコカコーラを販売するために「eKOCool」というソーラーパワーで冷気を保つクーラーボックスを開発しました。
このeKOCoolのおかげで、それまでぬるくなってしまった飲み物しか販売することのできなかった小さな商店がコールドドリンクを売る事ができるようになり、売上を大きく伸ばすこととなりました。現在ではインドのみならず世界中で電気の供給が難しい多くの場面、アウトドアから災害時などにこのeKOCoolが使用されています。

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コーラ

⑤ボーダフォンによるマスコットキャラクター「Zoozoos」
三十カ国以上にある通信会社ボーダフォンは一風変わったリバース・イノベーションをインドで行ったことで知られています。ボーダフォンは2007年にインドに進出したばかりで、国内に自社ブランドを確立するためのマーケティング戦略に頭を悩ませていました。そこで、ボーダフォンが打ち出したのが「Zoozoos」という白黒の人型キャラクターです。この親しみやすいキャラクターがインド国内で人気を博し、 Zoozoosは世界中のボーダフォンでマスコットキャラクターとして広告塔となっています。

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いかがでしょうか?
ハーバードビジネスレビューから出版されている「CONQUERING THE CHAOS」の中で著者のRAVI VENKATESANは、インドにおいてビジネスで成功することができれば世界どこでも成功を収めることとなるだろう、と説いています。
今後未来を変えていくイノベーションはまさにここインドで生まれ、カオスにもまれる中で成功の方程式を編み出し、やがて世界中に広まっていくのではないでしょうか。

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