India Note|インドの現代を知るウェブメディア

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ソーシャルビジネス大国インドで成功したユニリーバのBOPビジネス「Shaktiプロジェクト」

BOPビジネスってなに?

BOPビジネスとは、世界人口の約7割を占める年間所得が3000ドル未満の収入で生計を立てる人々=BOP(Bottom/Base of Pyramid)をターゲットとし、貧困撲滅とビジネスの両立を目指すソーシャルビジネスの一種です。
欧米のグローバル企業か発展途上国進出を進めていく際に、新たな収益源を確立するための手段としてBOPビジネスを展開しています。
日本企業はまだまだBOPビジネスに馴染みがないですが(日本企業の場合、社会貢献活動はあくまでブランディングを目的としたCSR活動の一貫として行われているケースが多い気がします。)今後海外進出が苦手な日本企業が海外のマーケットに展開していく際にもグローバル企業のBOPビジネスのケースはロールモデルの1つになるとされています。

BOPビジネスに力を入れている企業として有名なのが、Unileverです。

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Unileverは日本においてはP&Gに次ぐNo.2の印象が大きいですが、ここインドでBOPビジネスを足がかりに成功を納め、インドではNo.1消費材メーカーとして君臨しているのです。(消費材の分野に限った話ですが、インドシャンプー市場のシェアはUnileverの46%に対して、P&Gは25%と後塵を喫していますし、洗剤市場でもP%Gのシェア7%、Unileverは37%と大きな差があります。)

そんなUnilever(インドではHindustan Unilever Limitedという名前で、HULと呼ばれることが多いので、以降HULと表記します。)がインドで成功を収めたプロジェクトが「Shaktiプロジェクト」です。
今回はユニリーバがここインドで広めている「Shaktiプロジェクト」についてご紹介します。

ソーシャルビジネスのお手本ともされる「Shaktiプロジェクト」とは?

「Shaktiプロジェクト」はHULによる、社会貢献的、ビジネス的、両面の特徴を持ちます。

①自社製品を貧困層に浸透させることで生活水準の向上をはかる
②農村に住む女性を金銭を稼ぐ機会を与え自立を促進させる
③営業地域を拡大し、Unileverブランドを強化する

プロジェクトとして、この3点を目的としています。
Shaktiは、もともと「強くなる」という意味と、ヒンディー教の神様の名前に由来します。

Shakriプロジェクトとは、端的に言うと「農村在住の貧しい女性を販売員として教育し、自社製品の販売を彼女らにアウトソースする仕組みを構築するプロジェクト」です。
Shakriプロジェクトでは、人口が2000〜3000人程度の小さな農村を選出、その中で4〜5人程度の女性を選び、「Shakti Amma」と呼ばれるグループを組織させます。
そして、社員を派遣し、彼女たちにセールスやファイナンスの基礎などを教育します。
「自立した女性」となるための教育を受けた彼女たちは、約15000ルピー程度をHULが組織したマイクロファイナンス銀行から借りる事で、HUL製品を購入し、10%程度のマージンで販売する「小さな起業家」として独立していくのです。

その中で、Shaktiプロジェクトによって自立を果たした1人の女性のエピソードをご紹介します。

インドの貧しい農村で自立を果たしたシングルマザー、ロジャマ

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ロジャマはクルマシーというハイデラバードのから西に150キロ離れた小さな農村に住むシングルマザーでした。非常に貧しい家庭に生まれ育った彼女は17歳で結婚し2人の娘を授かりましたが、夫はじきに彼女を置き去りにし、遂に一人で家族を養わなければならなくなってしまったのです。
初め、ロジャマは母親の農業を手伝って一日数ルピーの収入を得ていましたが、それだけでは生計を立てることができないのは明らかでした。
数年後、ロジャマは彼女のような村にある、シングルマザーを助けるための組織に入ることにしました。
それが、HULが主催する「Shaktiプロジェクト」だったのです。彼女はそのときのことをこう振り返っています。

「あの瞬間から、私の人生が変わったのです。」

ロジャマはShakti Ammaに参加し、自ら稼ぐ力を得る事で、15000円程度の月収を安定して稼ぐことができるようになりました。
それは、畑を手伝っていたころは決して考えられないほどの額です。

「夫が私を捨てた時、娘以外に何も残っていませんでした。でも今では村中の皆が私を、”私”だと知ってくれています。その事が何よりも嬉しいのです。」

ロジャマは今、2人の娘を学校に通わせることもできています。
これは以前の状態だったら絶対に不可能だったことです。
自分の子供に教育を受けさせること、それは人生におけるチャンスを与えることです。

ロジャマは娘に小さな望みを持っています。
「幸せな結婚をして、その後、Shakti Ammaに参加することで経済的自立を果たしてほしい。」

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Shaktiプロジェクトは2000年にインド・アンドラ州にある農村から始まりました。
2008年には、100,000人の女性が「小さな起業家」として12州に渡って約400,000の村をカバーしています。
HULはNGOや政府など300以上の団体とパートナーシップを結び、このプロジェクトを通して女性の自立を支援しています。
このプロジェクトの成功で農村への販売網を広げたHULは、売上の半分を人口2,000程度の農村によるもので占めるまでとなりました。
この事実は社会貢献をビジネスによって行うソーシャルビジネスの可能性を示していると言えるでしょう。

自分が以前Unilever主催のプログラムに参加した際にも、Unileverの社員の皆さんは「Sustainability(持続発展的な成長)」を合い言葉に、利益の追求と同時に社会に貢献しているという誇りを持って働いているのがとても印象的でした。
このキーワードが今後のグローバルビジネスの1つの潮流となることは間違いないです。

<参考:http://www.hul.co.in/Images/12Feb-IIM-HUL%27s-Project-Shakti-shows-how-economic-development-can-be-brought-about-through-micro-enterprise_tcm114-284421.pdf>

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